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 第百十話 結婚式は二人だけで

 そして、挙式の日がやってきた。

 チャペルでの挙式のみで、食事会などはない。

 ただ、たくさんの思い出がほしいと優菜が写真をたくさん撮りたいという希望を出していたため、令がそのようにプランを組むようにしてくれていた。

 写真の別撮りでたくさん写真を撮って、挙式ではより二人の誓いの瞬間が、印象的に演出してもらえるようにした。

 写真を撮る時は優菜は綺麗な純白のドレスと、ピンク色のカラードレスを着て、幸せそうな令との、普段撮らないような写真を撮ってもらい、非常に満足していた。

 挙式ではゲストはいないにしても、やはり緊張していたが、令の余裕な表情を見ていると流石だなと思い、優菜もそれに見合う妻にならなければと思ってちょっと背伸びして頑張るのだった。

 でも、それがすぐに令にはわかってしまい、令がこっそりと優菜に「そんなに頑張ろうとしなくてもいい」と囁かれてしまう。

 優菜は令には何でもお見通しなんだなと思うと同時に、ちょっと恥ずかしいような気もした。

 そして、優菜と令は昼間の挙式ではなく、夜に挙式を上げることにしたのだった。

 大切な道しるべがある、ナイトウエディング。

 それに憧れた優菜が、ぜひその結婚式がいいと言って、令もそれには賛成したのだった。

 お腹に赤ちゃんがいるから、ドレスのサイズが少し合わないかも……という心配は問題なかった。もしもの時用に他にもドレスはあったし、幸い優菜はそこまでサイズに変動がなかったため、元々用意していたドレスで問題はなかった。

 優菜は、挙式の前に、何度も令に確認をする。

 本当に二人きりの挙式で問題なかったのかと。

 でも、令はそんな優菜の心配など全く必要ないんだと微笑んで、優菜を抱きしめて「俺達と赤ちゃんさえいれば大丈夫だ」と言うのだった。

 優菜はその言葉を聞いて、この人を選んでよかったと心底思った。

 結婚式までの打ち合わせは数回と少なく、優菜への負担を最小限に抑えたもので、そのお陰もあって、優菜は万全の体調で挙式を迎えることが出来た。

 そして、いよいよ、挙式が始まる。

 記念撮影の時、令は「似合っている」と少しだけ照れながら言った。

「令も似合ってるよ」

 ……本来は、新婦がバージンロードを歩く時、父親と共に歩くが、令と優菜は二人きりの挙式ということもあり、新郎新婦で一緒に歩いた。

 ロウソクの灯りが道しるべとなるナイトウエディングは、二人にとって忘れられないものとなった。

 二人だけだからこそ、これからも一緒に……と、強い決意とその気持ちをお互いに伝えられた。


 挙式が終わると、令は優菜に「どうだった? 思い残すことはないか?」と聞いた。

 優菜は満足そうに頷いて、笑みを見せる。

「思い残すことなんて、あるはずがないじゃない。令、本当にありがとう。これからも、どうかよろしくね」

「……こちらこそ。ところで、このあと旅行なんてどうだ? 旅行と言っても、忙しない旅行ではなく、のんびりとした旅行なんだが」

「……いいねぇ。生きたいかも」

「そうか。それはよかった。実は、挙式が終わったらすぐに旅行にと、宿も取ってあるんだ」

「え、そうなの? ……サプライズだね。びっくりしちゃった」

「俺だって、そのくらいはするさ」

「じゃあ、新婚旅行だね」

「そうなるな」

「あ、だからスタッフさん、凄くにこやかに素敵な旦那様ですねって言ってたんだ……。着替えとかも、もちろん用意してくれてたり……」

「用意している。新しいものをな。新しい生活になるんだ。そのくらい用意させてくれてもいいと思うが」

「ふふっ、令らしい。ありがとうね」

 二人はそれから旅館に泊まり、次の日からゆっくりと新婚旅行を楽しむのだった。

 旅館は有名な旅館とは違って、ひっそりとした旅館ではあったが、高級旅館で、広大な庭園があり、宿泊用の客室も広く、また個室の露天風呂があって人目を引きせず入ることが出来て、二人にとってはまさに癒しの宿だった。

 食事は季節を感じられる料理を部屋で食べ、ひたすらのんびりと過ごした。

 少し飽きたらすぐ近くのカフェやお店などを覗いて回った。

 周りに何かあるという立地も、令がこだわって選んだポイントだと、後に優菜は聞いた。

 優菜を第一に考えた、そんな旅行だったのだ。

 身重な身体のことも考え、無理をしなくてもいい旅行。

 それを叶えるために、令はあえて無計画での旅行にしたのだった。

 もし行きたいところがあると言われたら、そこに行くために予約でも何でもするつもりだったのだ。

 だが、優菜は令と一緒にいられればいいと、令と一緒にずっといた。

 それは令にとっても嬉しいことで、優菜にとっては安心でいる時間だったのだ。


 そして二人が旅行から帰って来ると、少しばかり疲れた優菜はすぐに着替えて、ゆったりと過ごせるようにした。

「お疲れ様、優菜」

「お疲れ様—、令。ありがとうね。まさか旅行に行けるなんて思ってなかったから、凄く嬉しかった!」

「……二人でなら、どこへでも行ける。行きたいところが出来たら言ってくれれば、連れて行こう」

「うん。ありがとう!」

 そして二人は思う。

 最高の結婚式と、いい新婚旅行だったと——。


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