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 第四十七話 難しい未来

 姫乃はその夜、繁華街をふらふらと一人で歩いていた。

 そこにはあまり柄のよくない男達がいる。

 声を掛けられ、姫乃は逃げようとして、わざと捕まった。

 そしてお茶になどと言われて誘われ、酒の場に連れて行かれたのだった。

 酒の場で、姫乃は酔った……振りをした。そのままの勢いで、姫乃は優菜についてを男達に軽く教えていた。とても可愛くて、純粋で、親が決めた婚約者はいるけれど男を知らないのだと。

 男達の目がぎらぎらとし、もっと優菜の情報が欲しいと姫乃に教えるように言った。

 姫乃は「彼女のこと、本当に好きなの。だから、酷いことはしないでね。ただ、遊ぶくらいなら、きっと大丈夫だと思うの」などと言って、心の中で笑っていた。

 ついでにと社内で使っているトークアプリの、優菜のアカウントを教えた。

 男達は姫乃に「ありがとう」と言って、姫乃には何もせずにそのままどこかへと行く……はずもなく、姫乃に「もう少し遊ぼう」と言ってどこかへ連れ去ろうとしたが、姫乃の方がそこは上手だった。姫乃は少しお手洗いへと言って、そのまま店を出た。

 自分の連絡先は男達に教えることもなく、優菜の連絡先だけ教えてそのまま帰って来たのだ。

 姫乃は自分の家に帰ると、着ていた服を脱ぎ捨てるようにして洗濯機に入れ、回し始める。

「あんな汚い男達に触られたなんて、反吐が出る」

 その視線は、どこまでも冷たいものだった。

 そして下着姿のまま鏡を見に行き、自身の体に何か変化がないかとよくチェックをして、太っていないことなどを確認すると、シャワーを浴びて、さっさと次の日の準備をして眠りに就いた。


 その頃になると、優菜は令に送ってもらって自宅のベッドでスマホのゲームで遊んでいた。

 しかし、しばらくしてからピロンとメッセージアプリの音がした。

 全く知らない人からだった。

 それも、何人からも届く。

 どれも遊ばないかといった内容で、写真を送ってほしいなどといった要求を書いたものまであった。

 優菜は気持ち悪くなって、アプリの通知音を消した。

 しかし、どんどんメッセージは増えていく。

 優菜はすぐに誰が何をしたのか、想像がついた。

「また……か」

 過去にも、同じようなことが何度かあった経験から、すぐに姫乃だろうと思った。

 優菜はどうしたらいいのか悩み、結局無視するのが一番だと思ってブロックして終わらせた……つもりになっていた。

 その行動が、男達を逆に誘い出すことになるとは知らずに……。


 次の日、優菜は姫乃に「おはよう。昨日はよく眠れた? なんだか目の下、隈が出来てるけど大丈夫?」などと言われたが、優菜は目の下に隈など出来ていないし、そう聞いてくる時点で、やはり姫乃が犯人だったのだと確信させる結果となった。

「大丈夫です。隈……は、ありませんし、姫乃部長こそ、昨日どこに行ってたんですか」と聞くと、姫乃はなんだか昨日繁華街に行ったことがバレたかのようで、腹立たしく思えた。

「別に、どこだっていいじゃない。それよりも、新しいお友達とも仲良くね」と姫乃が言い、優菜は「生憎、友達には困ってませんから」と言い返すのだった。

 そして二人はそれぞれの部署に行くのだが、優菜は内心、おっかなびっくりというところがあり、言い返したことに強い高揚感のようなものを感じていた。

 自分にも言い返すことが出来たという、確かな自信が、優菜に出てきたのだ。

 優菜は今の自分に怖いものなどないと、まるで自分が無敵状態のような気がしてしまった。しかしそれは間違いだったと後に気づくことになる。

 それだけ、優菜を待ち受けているほんの少し先の未来は、難しいものなのだから。


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