完結·最近更新:第1話·2024年08月17日 12:12
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あらすじ
詳細
主に反帝国の分子が闊歩するエクゥル市のはずれ。
ガス灯がまばらに闇を照らす中だ。倒れている男のそばに、少女がしゃがんでいた。
男はゆったりとして、幾何学系の模様の入った民族衣装を着ている。黒く染まったあたりにあるのは、血だろう。
黒髪の後ろを刈り上げ、前に行くほどにアンシンメトリーに伸ばし、大き目のパーカーを着て、ショートパンツ二つのヒップバック、スニーカーという姿。
十六歳の少女だが、身じろぎもしないでいる。
ただ、その幼げで端正な容姿には、喜びを押しつぶしたような表情が浮かんでいた。
「よー、ロミゥ。こんなところで死体漁りか? 相変わらず趣味が悪いな」
ロミゥはゆっくりと振り向いた。
あまり素早い動きをできる状態ではないのだ。
男は、白と青のインバネスコートに、黒いニッカポッカをはいて、太いベルトを二本、垂らしていた。二十代前半。髪を後ろになでつけ、手にはサブマシンガンをだらりと下げていた。
イクルミという治安組織のエクゥル市支部副隊長、ウィセートだ。
彼がいるということは、近くに部下たちが配置されているはずだ。
ロミゥはあからさまに舌打ちした。
「そいつ、おまえに殺されるとは、想定外だったな。エクゥル市に入ったとは聞いていたが、これが目的か。エクゥル浪人たちをいくら殺しても、無駄だったわけだ」
「・・・・・・殺した?」
ロミゥはその言葉に反応した。
「ああ、殺った。何しろ、おまえ、堂々とグリスカ殺害を叫んでいたんだから、黙ってるわけにいかねぇだろう。やつらが潜伏してたと思われる四か所で皆殺しにしてやったよ」
ロミゥは急に目の前が暗くなり、身体が重くなる衝撃を受けた。
エクゥル浪人たちは、彼女に一時的な安息の場を与えてくれた恩人たちだった。
奥歯を噛みしめて、歯ぎしりを鳴らす。
鼻で笑う、ウィセート。
「グリスカを殺したとなると、いろいろ漏れてるもんがあるみたいだなぁ。まぁ、しょうがねぇけどな」
ロミゥのそばで倒れている男、グリスカは中央から市に出向してきた政府高官である。
帝国の皇帝、フェーシンが自らの聖化のために悪を取り払う作業について、重要な役割を果たした男だ。それがこの市に送り込まれたと聞き、反帝国の浪人たちは激高したのである。
自らを囮にして、彼らはグリスカ暗殺をロミゥに託した。
結果、彼らは見事に散ったことになる
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創意工夫ありし者2024-08-17 12:12ネオ・デビュー2024-08-17 12:12作者のひとりごと
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