作家インタビュー:かくはる——文章表現で、すべての人物に歴史を持たせるネオページ編集部2024年09月02日

すでに作家としてスタートを切っている方々に、作家生活についてのさまざまなお話を聞く「ネオページ・インタビュー」。
今回は、文章表現の独自の味わいを通じて、すべてのキャラクターにそれぞれの歴史を持たせる「かくはる」さんにお話を伺いました。


——まず、自己紹介をお願い致します。

かくはる かくはると申します。小説の執筆経験はほとんどありませんが、よろしくお願いいたします。


——執筆活動で影響を受けた作家や作品はありますか?

かくはる 影響を受けた作家や作品は膨大で…。おそらく一番有名な作品は、ノーベル文学賞受賞作、ヘミングウェイの「老人と海」です。


——今回の連載新作『ローリー・グローリーストーリー~八歳、神童、国家運営をする~』は、これまでとは異なる挑戦になりますか?

かくはる はい、実質わたくしの初めての長編小説作品であり、三十万字を超える長い物語になりますから、十分な密度で世界観を構築可能だと感じました。半面、解説や説明文が冗長にならぬよう、展開のテンポアップを意識しています。また、アイディアや設定、人物名などは編集の方から頂いたものを、可能な限り用いていますので、その点も初の共同作業という事で、挑戦といえます。


——『ローリー・グローリーストーリー』について、読者に特に注目してほしい点は何ですか?

かくはる 編集の方から頂いた原案に、内政、領地経営ジャンルとありました。そこで異世界ものですがバトルや魔法中心ではなく、人物の会話や交渉、政治ドラマなどを前面に出して執筆することに決めました。堅苦しくとっつきにくい内容になってしまうかもしれませんが、ネオページという華やかな舞台では、個性を出して尖らせないと埋もれてしまうと考え、このようなスタンスを貫くことに決めました。
社会では多様な立場、個性を持つ人物たちが利害関係を構築し、複雑につながっています。そこでは善と悪が相対的価値観になってしまい、勧善懲悪の色が薄れていきます。しかし、そんな中で、主人公は自らの信じる絶対的善の道を歩もうと足掻きます。登場人物が多くて読みづらいかもしれませんが、そこが政治劇の面白さでもあります。


——作品の魅力を表現するために、通常どのような技法や要素を取り入れていますか?

かくはる この作品は登場人物が多いのが特徴ですが、まず作者としてキャラ一人一人をしっかり構築してあげる事。
脇役とは無個性で語るに及ばぬ人たちではなく、現時点では焦点が当たっておらずぼやけて見える人、というスタンスです。ですから、再登場した時に焦点が当たれば、その人物は鮮やかに映ります。現実の人間社会と同様です。すれ違うお一人お一人に、その方だけの歴史がある。もう一点は、小説は漫画やアニメなど他の表現媒体の代替物や劣化品ではないという考えです。
文章表現独自の味わい、余韻があります。一般論として小説は、眼前に広がる映像を受け入れるのではなく、読者の頭の中に映像が浮かび上がる仕組みになっています。そのような面白さを追求するために、文章表現を考えています。
一例として、私の作品内に、主人公の少年が敵を罠にはめるため、給仕に扮して登場する場面があります。語りだしは敵の視点なので、少年が誰かはわからない。映像作品だと一目瞭然ですが、こうした主人公の登場シーンを印象付ける技法は、小説ならではと言えるのではないでしょうか。


——初期に「ネオページ」とやり取りをしていた際、どのように感じていましたか?

かくはる 未だに謎のままなのですが、編集の方がどうやって私を発掘したのか、わかりません(笑)。趣味でイラストを描いてちょこっと文章を添えるなどという事をしておりましたが無名でしたので、編集の方のアンテナはすごいなと。ただ、編集の方のお話しぶりが紳士的で、やり取りを重ねて信頼できる方だと思いましたので、連載決定までは非常にスムーズに進んだと感じています。


——「ネオページ」と契約する決め手となったものは何ですか?

かくはる それは、読書のプロともいうべき編集の方が、私の作品には魅力があると仰ってくださったからです。もちろん、原稿料を頂けるという点が決め手の一つではあります。しかし、金額の多寡にかかわらず、私の文章に対価が支払われるという事に、驚きました。別に生業がありますので、お金を貰えるという事の重みをよく知っています。


——契約した現在、「ネオページ」との契約の形についてどう評価していますか?もし以前に不安に感じていた点があれば、現在はどのように感じていますか?

かくはる 一度も相手方と対面せずに執筆契約を締結することに関して、不安がありました。しかし、現在においてはその様な形態も珍しくないのだろうと。ましてや、文章を納めるという業務に関しては。私の質問に、編集の方が丁寧に答えてくださり、何でも聞いてくれと、回答してくれましたので。これらを思い返すと、ネオページさんとの契約に関しては問題なく、良好な契約関係であると評価しています。


——執筆中に直面する主な悩みや課題は何ですか?逆に、最も楽しいと感じる瞬間はいつですか?

かくはる 作品を最後まで仕上げられるかどうか、最大の悩みです。何度も推敲して自分にできる最善の仕事をしようと考えています。気分が乗っているときは文章量が増えてしまうので、できる限り3500字くらいで収まるよう、ブラッシュアップしています。それでも、法廷闘争をテーマにした回などは文章量が増えてしまい、編集の方のアドバイスも受けながら、何度も読みやすいよう手直ししました。
大まかな話の流れは決まっていますが、登場人物がどのような発言をするか、どのようなリアクションを取るかは、当然、書いてみないとわかりません。人格に矛盾が出てしまうと嫌なので、話の順序などが変化してしまう事もあります。そのほか、伏線を回収したり、仕込んだり…私は理屈っぽい性格なので、ただ単に、主人公は凄い!神童だ!というような評価を並べるようなことはしたくありません。まず具体的な問題点を提示する、そしてそれを、与えられた条件で解決して見せる。最後に評価が伴う。そのような一連の流れがうまくつながった時は、とてもうれしく、楽しく感じます。


——「ネオページ」からどのような支援を期待していますか?現在、「ネオページ」の編集者との交流で感じていることは何ですか?

かくはる ネオページさんから契約作家として報酬を頂いている。また、あのような大きなプラットホームで作品を紹介してくださる。これ以上の支援は現段階では望んでいません。おかげさまで他の作家様とも交流が生まれました。クリエイターと、受け手との距離が近く、手軽に自己表現可能な場所が与えられていることに、感謝しています。
担当の編集者様は、私の次に、私の作品を読んでくれている方です。流行をおさえてアドバイスをくれるので、私としてはもう、信頼して全力で物語を綴っていくだけです。期日に文章を添付、送信すると、大抵の場合、「よくできていると思います」から始まる返信があります。この一言が私の原動力です。なお、主人公ローリーの名付け親は、担当さんです。


——一日のうち、どれくらいの時間を執筆に割いていますか?「ネオページ」の契約作家になってから、日常生活と執筆活動のバランスはどのように取っていますか?

かくはる 文章作成それ自体は、一日平均で2時間くらいでしょうか。夜の10時くらいから作業しています。電車移動中、車の運転中など、脳内でキャラクターを動かすなどして物語を作っています。
担当さんが契約の最初におっしゃってくれたのですが、無理をする必要はないと。そのことがとても嬉しく、おかげさまで良いバランスで生活できています。ただしゲームで遊ぶ時間が減ってしまいました(笑)。


——周囲に執筆活動を支えてくれる、または応援してくれる人はいますか?応援してくれるファンに向けてどのような言葉を贈りたいですか?

かくはる 夜、家事を手伝わずにキーボードをたたいているので、家族には小説を書いていることを話しました。
もしも、私の作品を気に入ってくれる方がいるのであれば、それは無上の喜びです。作家かくはるの存在意義はそこにあります。


——今後どのような作品に挑戦したいと考えていますか?

かくはる ホラー、ミステリー、推理、SF、バトル、恋愛…などなど、夢は尽きません。まずは現在の作品にそういった様々な要素を取り入れて、総合娯楽作品として仕上げたいです。


——小説家としての活動で達成したい目標は何ですか?今回の契約がどのような影響を与えたと思いますか?

かくはる まず現在執筆中の作品を完成させることです。他の表現媒体には無い、小説でしか味わえない魅力を感じ取っていただけるように、全力で執筆いたします。そのような意味で、今回の契約は、目標への片道切符です。もう後戻りはできません。


——「ネオページ」の今後の発展に対してどのような期待を抱いていますか?

かくはる 今、私たちの身の回りには、様々な素晴らしい娯楽があふれています。読書なんていうと、何か高尚な趣味のように取られかねないような。
私にとって読書は身近で手っ取り早い、安価な娯楽の一つにすぎません。ネオページさんに集っている人々は、きっと大半がそう思っているのではないでしょうか?ネオページさんが小説を読むことの面白さを大きく発信してくだされば、または私の様な潜在的な作家を発掘してくだされば。そんな期待を勝手ながら抱かせていただいております。
今回はこのような発言の場を与えてくださり、ありがとうございました。

 

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